2025年度春学期メディアコム公開講座(講師ネットフリックス杉原佳尭氏)開催報告

2025-07-17

メディア・コミュニケーション研究所は、6月16日、三田キャンパス北館ホールにて、春学期公開講座を開催しました。

講座では、ネットフリックス合同会社ディレクター公共政策担当の杉原佳尭さんが、「パブリックポリシーとルールメイキングへの働きかけの実際 ― 日本が国としてソフトパワーを活力につなげるために」というテーマで講演。塾生、社会人、高校生ら約80名が参加しました。

杉原さんはまず、長野五輪後のスキージャンプにおけるルール変更が日本勢の低迷を招いた事例や、かつて世界を席巻した日本の半導体産業がシェアを落とした背景を挙げ、国際的なルールやスタンダードが、スポーツやビジネスの競争環境をいかに大きく左右するかを指摘しました。その上で、ルールを所与のものと捉えるのではなく、自社の技術やサービスが普及しやすいよう能動的に働きかけていく「ルールメイキング」が、現代の企業や国家にとって不可欠な戦略であると強調しました。実際、ルール形成に積極的に取り組む企業は、日本企業の年平均成長率に比べて、高い成長率を記録しているというデータも示しました。

講演では、ルールメイキングの成功事例として、ダイキン工業が自社開発の低環境負荷な冷媒「R32」の安全性を訴えて国際規格を改定させ、インド市場で飛躍的に売上を伸ばしたケースや、ヤマハ発動機が電動アシスト自転車の安全性を実証して規制緩和を実現し、新たな市場を創出したケースが紹介されました。

杉原さんは、ルールメイキングのプロセスとして、政府や業界団体だけでなく、NPOや消費者など、多様なステークホルダーを巻き込む「仲間づくり」が重要であると解説しました。最後に、「ルールメイキングは、未来の市場を自ら創り出すための強力なツールである」と講演を締めくくりました。

講演後の質疑では、どの程度の強さをもったルールが認められるのか、どのように公正なルールを作るか、ロビイングそのものが問題を抱えていないかなど、様々な質問が活発に寄せられました。

次回のメディア・コミュニケーション研究所公開講座は、2025年度秋学期に日吉キャンパスで開催予定です。

「パブリックポリシーとルールメイキングへの働きかけの実際」
「パブリックポリシーとルールメイキングへの働きかけの実際」
「パブリックポリシーとルールメイキングへの働きかけの実際」
「パブリックポリシーとルールメイキングへの働きかけの実際」
撮影:竹松明季