2023年度メディア・コミュニケーション研究所 修了論文発表会
身体を保護法益とする抽象的危険犯としての誹謗中傷等罪ー侮辱罪の厳罰化を契機としたインターネット上の誹謗中傷事案に関する考察ー
基本情報
ゼミ:鈴木秀美ゼミ
氏名:黒川真輝
所属:法学部法律学科
修了論文発表
メディアコムには2021年度に入所しましたが、入所の動機となったのが、2020年に起こった木村花さんの自殺事件でした。
メディアコムの修了に際し、インターネット上の誹謗中傷について、メディア及び法学的観点から検討をする機会をくださった鈴木先生と、楽しくも深く検討する機会をくれたゼミの仲間には大変感謝をしています。
不出来な部分も多いとは思いますが、その点に関するご指摘も含め、是非一度目を通して頂けると嬉しいです。
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2022年に施行された侮辱罪(刑法231条)の厳罰化に関する法改正を契機として、インターネット上の誹謗中傷に対する刑事的規制に関して検討を行いました。判例•通説によると、侮辱罪は外部的名誉を保護法益としており、被害者の社会的評価を低下させる行為があった場合に成立する犯罪となります。他方、インターネット上の誹謗中傷で特に問題となるのは、自殺にも至りうる精神的苦痛を負わされることであり、社会的評価の低下とは別であるとの指摘があります。
今回の研究は、この問題意識を出発点としています。具体的には、まずインターネット上の誹謗中傷の特徴についてまとめ、その次に現行の侮辱罪の規定について確認しました。
その後、ここまでの検討を基に、上述した問題意識(インターネット上の誹謗中傷と侮辱罪の関係)について、考察を深めています。
そして最後に、インターネット上の誹謗中傷に対応する新たな犯罪類型を設けるべきとの立場から、その保護法益や構成要件について、既存の見解や諸外国における議論をベースに検討しました。ここでは特に、インターネット上の被害実態と刑法の法益保護機能の観点から、身体を保護法益とすべきこと、及び抽象的危険犯の形式によるべきことについて述べ、かかる立法の正当性について検討しています。
所属ゼミ紹介
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