2025年度秋学期メディアコム公開講座「Googleの進化:情報革命から知能革命へ」開催報告

2026-02-09

慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所は、2025年11月11日、日吉キャンパス第4校舎B棟22番教室にて公開講座を開催しました。

講座では、Google DeepMind プリンシパル サイエンティスト・東京拠点リードの全 炳河(ぜん へいが)氏が、「Google の進化:情報革命から知能革命へ」というテーマで講演。塾生を中心に約65名が参加しました。

全氏はまず、人類は産業革命と情報革命を経て、今や第三の革命である「知能革命」の入り口に立っていると指摘しました。知能とは「知識を応用して目的を達成する能力」であり、Googleは創業以来、検索エンジンによる「情報の整理」から、ナレッジグラフによる「知識の構造化」、そして現在の生成AIによる「知能の実現」へと進化を続けてきたと解説しました。 特に、大規模言語モデル(LLM)の登場は、知能そのものをデジタルデータとして保存・伝達することを可能にした歴史的な転換点であると強調しました。

講演では、テキストの壁を越えて人間のように見て、聞いて、世界を理解するマルチモーダル生成AI「Gemini」や、自ら計画を立ててタスクを実行する「エージェントAI」、さらには、デジタル領域に留まらず、物理世界で活躍する「フィジカルAI(ロボティックス)」について紹介されました。

AIは科学技術の進歩も劇的に加速させています。ノーベル化学賞受賞のAlphafold2は、2億種類以上のタンパク質の構造を解明し、本来、研究者が構造解析に費やすはずだった時間を推定約10憶年分も短縮する成果をあげたといいます。

全氏は、2026年以降、AIの学習データ(テキスト)が枯渇するという予測に言及し、テキストデータに依存する性能の向上には限界がくると指摘。今後は、AIがデジタルや現実世界で自ら試行錯誤を繰り返し、経験から学ぶ時代が到来すると展望しました。

講演の最後に、全氏は、世界の大学生の約9割が日常的に生成AIを活用し、日本の大学生の約7割が学習に生成AIを継続的に利用する反面、生成AI利用者の75%が不安を抱えているというデータを示しました。AIを賢く安全に活用するためには正しい選択が必要であると強調し、6項目からなるチェックリストを提示しました。

後半は、司会のメディア・コミュニケーション研究所の水谷瑛嗣郎准教授が全氏と対話形式で質疑を行いました。AIを賢く使いこなせる層とAIに依存してしまう層との格差をどう埋めるかという水谷氏からの問いに対し、全氏は、教育が最重要であり、AIリテラシーの向上こそが唯一の解決策だと述べました。このほか、AIの発展に不可欠な資源やインフラの問題解決にGoogleが注力している点や、「制約がイノベーションを促進する」との見解も示されました。その後、会場の参加者からも多角的な質問が相次ぎました。

次回のメディア・コミュニケーション研究所公開講座は、2026年度春学期に三田キャンパスで開催予定です。

「Googleの進化」
「Googleの進化」
「Googleの進化」
「Googleの進化」
講演後も参加者から熱心な質問が続いた

撮影:竹松明季